拒食症と過食症 摂食障害に迫る

「拒食症」も「過食症」も同じ

摂食障害は神経性食欲不振症(拒食症)と神経性過食症に分類されます。一般にはそれぞれ拒食症・過食症の名で知られています。

食べることを拒否する拒食症と、大量の食べ物を食べては吐いたり下剤を飲んで排泄したりする過食症は、一見すると食べないことと食べ過ぎることは間逆で全く違う症状に見えるかもしれませんが本質的には全く同じ病気です。

その特徴として始めは拒食だけどだんだんと過食になってしまうこと、
また過食と拒食を行ったり来たりする。そのサイクルになってしまうことがよくあります。

いずれも「肥満に対する恐怖」や「やせ願望」など共通する部分があるので、同一線上にあると考えられます。「拒食」や「過食」は表に現れた現象に過ぎず、まったく別のように見えても、そのおおもとは同じものであるということがわかります。

同じ病気の違う段階と考えてもよいでしょう。ちなみに過食症は英語ではブリミアといいますが、この語源は「ブル」つまり雄牛とリモス(食欲)を合わせてできた言葉で。つまりウシのような食欲というような意味になります。



①標準体重のマイナス20%以上のやせている

②過食、大食あるいは隠れ食いをする

③やせるために過度に運動したり、下剤を乱用したり、嘔吐(おうと)をしたりする

④体重や体型についてのゆがんだ認識

⑤30歳以下でなおかつ女性に多い

⑥女性ホルモンのアンバランスが生じ、無月経となります

⑦やせの原因となる他の器質的疾患がないこと



そして摂食障害になったらなかなか治療は難しく、拒食症になれば必ず過食症になってしまいます。
拒食から過食にならずして摂食障害という病気はならないと思います。



詳しい症状としては

・必要な栄養分の欠如は肌あれ、もろい爪、糸のような髪、抜け毛をひきおこします
・激しいダイエットはホルモンレベルを大きく減少させ、生理のサイクルを乱します
・筋肉や脂肪の減少のため体が熱を保つことが困難になり、低温に対する体温調節機能が低下します→低体温とダイエットの関係
・膝のまわりに水腫ができたり腫れたりします
・食べ物をほんの少ししか口にしなかったり、何口食べるか決めていたりと、自分自身に極端に厳しいガイドラインを強いるようになります
・食べ物、体重、カロリーに対する極端な偏見があります
・体重を1日に10回あるいはそれ以上測ることがあります
・過度な運動によって減量に拍車をかけようとします
・心理的変化のため、拒食症患者は家族、友人、仲間達から社会的にとじこもろうとします
・低い自尊心は拒食症患者につきまといます
・拒食症患者は自分が嫌いな体を大きめの服を着て隠そうとします
・自分が極端に体重にこだわっていることを否定し、さらに減量しなければならないと主張します

などがあります。もし該当する項目があれば注意する必要があります。



過食症は、食べた後、後悔し自己嫌悪に陥ります。必ず代償行為が伴います。そして、嘔吐したり下剤を乱用してしまいます。嘔吐・薬物・運動(過度のものがほとんど)・絶食などが該当します。

過食症もただの食べ過ぎの場合もお腹いっぱいまで食べるのは変わりありませんが、過食症の場合はとにかく、たくさん食べた後「美味しかった」という気分がなく、「太る、辛い」といったように落ち込む人が多いです。→たくさん食べるのを防ぐ方法

その後、代償行為を行うという繰り返しになります。大食いの方はたくさん食べたとしても罪悪感を感じる人はほとんどいないと思われます。
食事を楽しんで食べていると思います。



原因としてよく勘違いされているのがダイエットとの関係です。摂食障害についてはハッキリとした原因は分かってないのが現実です。しかし精神病には分類されません。因みに精神病は統合失調症と一部の感情障害だけです。

ただうつ病に効く薬が過食の発作に効く事があり、うつによく似た症状を併発するので何らかの神経科学的な問題を指摘されてはいます。

治療を受ける前、患者さんの家族などは、決まってダイエットが原因だと思っています。やせをよしとする文化を背景に、若い女性が挫折した時に摂食障害という形をとりやすい状況になっていることは事実ですが、この病気の本質は単なるダイエット病ではありません。

ことに減量・食事制限が要求されるスポーツ選手や女優、バレリーナ、糖尿病患者などの場合でも、摂食障害の原因はダイエットそのものではなく、その背景に必ず何か、その人にとっての葛藤的な状況が存在します。

その葛藤とは摂食障害に特別のものではなく、きわめて今日的なさまざまな悩みです。家庭、学校、職場、友人などの人間関係での悩みや自己実現、独立と依存の葛藤などの発達上の課題に対するとまどいから発症するケースが多いといわれています。

ストレス耐性の低い若者が多く、さまざまな問題を抱えている現在のわが国の状況を考えると、ますます摂食障害は増えると予想されます。→ストレスとダイエットの関係




食事を少なめ(腹八分目ぐらい)にしたり、厳しい食事制限、毎日のウォーキングで目標の5キロ減までいったのだけれど、ダイエット中に食事を食べすぎてしまうというわけではなくて、腹八分目以上食べたらどうしようという不安で、今度はうまく食べられない人もいます。

雑誌などで、ダイエットをしたら過食症になってしまったなどという記事をよく見かけるからでしょうか、「リバウンド怖い症候群」とでも呼びたい現象です。

確かに、ダイエットがきっかけになって過食症になることはあると思います。でも、逆に拒食になってしまうこともあるのです。過食症が怖いあまりに拒食症になってしまうわけですね。

ダイエット後、過食になってしまう不安から、おそるおそる食べていたら、なんだか体重が減ってしまった。そうなると今度は、なぜかその体重を維持したくなってしまうのです。

これがダイエットの落とし穴というか不思議なところで、いったん落とした体重は、たとえやせすぎと思っても、維持したくなってしまう。そしてその体重を維持しているうちに、偶然にまた体重が減ったりすると、今度はその体重にしがみつく。こうなったらもう底なし沼に陥ってしまうかもしれません。
あまり神経質にならずに食べるようにすることがポイントです。

でも、うっかり食べると、歯止めがきかなくなるような気がして……という心理が危険なので、そのような人は心配しなくても、すでにからだが腹八分目を覚えており、意識しないで食べても、太ることはありません。今の体重を維持することを目標に、食生活を考えていきましょう。



予防としては
発症する人にはよく似た性格パターンがあります。
・周りの目を気にする
・両親に面倒をかけない“いい子”
・勉強、音楽、美術、運動など、常にトップでいないと落ち着かない
・自分には何の価値もないと思っている
・普段から全くストレスを感じない
・もやもやした気持ちやイライラした気持ちをうまく解消できない
・自分の気持ちを言葉に出せない
カロリーや体重という数値や外見の美しさを全てだと思うこと。
そういう考え方を捨てるべきです。


Q拒食症・過食症は必ず治る病気ですか?

A必ず治ります。しかし、ある程度の時間が必要です。 摂食障害は一種の病気ですが、内臓の病気やけがとはちがって「人生を一時停止している状態」であり、いわば長いトンネルに入っているようなものなので、個人によってトンネルの長さが違うので、軽い場合はいつの間にか自力で抜け出すことができるかもしれませんが、その場合も治療を受けることによって、より早く抜け出すことができるのです。

人間の行動を短い期間で変えることはできません。もしも、子どもの心の痛みがわからない親ならば、親の「育て直し」が必要な場合があります。また場合によっては、親元から離れて独立した生活を薦める場合もあります。環境によっても違うので、まず治療者は患者さんの家庭環境を把握することから始めなければなりません。治療には、かなり長い期間を必要とすることもありますが、患者さんの自立、心の成長につれて、効果は必ず現れると信じて病気と向き合って下さい。→環境が原因で肥満になっている



Qなぜ空腹感や満腹感がわからなくなるのでしょうか?

A過食症の患者さんは、空腹だから過食するのではありません。何か心の中に不安や怒りなどがあるとそれを解消するためにものを食べる。つまり、心理的な動機によって過食するのです(代償行為)。したがって、空腹感とは関係なくものを食べることができます。
この状態は、患者さんの脳の中で、生きていくために必要な生理的な部分より、心理的(観念的)な部分の働きのほうが優先されている状態と考えることができます。

人間にかぎらずあらゆる動物は、からだが今何を要求しているか、拒否しているのは何かを知り、自分の命を守っています。しかし、摂食障害の患者さんは、からだが食べ物を欲しがっていても観念の部分が食べることをやめさせたり、もうおなかいっぱいだと信号を発しているのにさらにものを食べさせてしまう状態なのです。つまり、からだの生理的欲求が観念によって押さえつけられている状態だということができます。





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